7.11.2009

New york,alone.nightmare

その昔、20代の終わり頃、一人でニューヨークを旅行した。
もうあまり細部を憶えていないが、その時の自分の感情は今でも強く憶えている。
全く日本語が通じない大都市の中で、一人行く当ても無くふらついた。
金も余りないし、そんなに時間も無い。
それでもその頃、自分探しみたいなセンチメンタルさと名も無き失望感の混在の中で街をふらついていた。
そして地下鉄に乗った。

色んな人種の人が寡黙に地下鉄の暗闇と轟音の中でレールのリズムに揺れながら静かに時を過ごしている。

つり革を持つ太った黒人の親子らしき母と娘。
スーツと丁寧に着こなした白人男性。
南米風の男は耳にイヤホンを当ててなにやら音楽を聴いている様だ。

そして俺は次の駅もどこへ向うかも分からないまま同じ車両で不安を抱えながら辺りを見廻す。
その時感じた。
まるでこの列車は俺の人生じゃないか。
行き先も方向感覚も無くし唯唯、日常に流されている。
強く感じで嫌になり途中下車した。
勿論、知らない駅で、当ても無く。
しかし、地上に出ることも無く、引き返したい衝動に駆られ、列車に乗車した。
また、暗闇と轟音は俺の感情を心底闇に叩き落した。

その後、どうやってYMCAに帰ったか憶えていない。

今でも、時々その時のことを思い出す。
白昼夢なのか、悪夢なのか?

三流映画のワンシーンなのか?
今でも時々あの地下鉄から下車できない自己投影の象徴なのか?
ニューヨークの地下鉄にまたいつの日にか乗ってみたい。
そして今の俺ならどう感じるのか自分を試して見たいと思う。