8.01.2009

1Q84 again!

村上春樹氏の長編小説、1Q84を読んで独特の読後感にある。
それは、過去の作風の延長線上にありながら、この作品が少し異なるところである。
過去の作品にある特有のファンタジー的な爽快感、現実に立脚していない小説の中の世界を大人の感覚で泳ぎまくれる浮遊感みたいなものが今回は些か少なくなっている。
寧ろ、現実の重さ、暗さが所々でコントラストとして物語を彩る。
主人公、青豆、大吾のそれぞれの心理描写に共感と時には独自性を感じながらも非現実の世界に溶け込んでしまう。
二人が幸せな再会を果し、静かな生活を始めてくれたなら結論は面白くなくとも納得できただろう。
そして、帰着を凝ってくれたなら有り難かった。
しかし、そうではない。
二つの月の世界から抜け出すことなく、会話を共にする再会をする事も無く。
遠い過去の眩しい思い出の中でこの話は終わる。
ある意味、ここが現実的であり、裏切ってくれる部分である。
一つの物語だが未だに自分中で結論の出せない小説である。