9.21.2009

些細な瞬間の心を捉えて離さないこと

電車の中での向かいの座席の子どもの笑顔。
隣の席の女性のキツイ香水の香。
街の横断歩道でのすれ違う人の表情。
手をつなぎ仲睦まじく寄り添う恋人達。
路上の片隅で燻り続けているタバコの煙。
ガードレールの切れ目に巻きつけられた錆付いた鎖。
深夜の人気の無い歩道の取柄の無い街灯。
夕闇のビルの谷間から見える揺れるオレンジ色の日差しを受けるアスファルト。
無意識にタバコの火をつけては消す右手。
雲と雲の切れ目に重なる生命に似た繋がり。
川の流れに見る命の躍動。
ため息をつく買主と散歩途中の犬。

目を凝らすと面白い瞬間に満ち溢れている。
気にかけては忘れてゆく瞬間にそのつど心を奪われる。
年老いてもそんな瞬間に気付く自分でいたい。